はじめに
高温多湿な日本の気候では、家の中でも蒸し暑く、エアコン冷房をつけると肌寒くなり快適にするのは難しいです。しかし、高気密・高断熱の家なら、エアコン一台で家全体を冷房・除湿することができ、常に快適な気温と湿度を保つことができます。エアコン一台で冷房することにより、電気代も抑えながら快適性を保つことができます。では、どのような仕組みで、どのようなメリットがあるのでしょうか。この記事では、エアコン一台全館冷房の基本と注意点を解説します。
エアコン一台全館冷房とは
エアコン一台全館冷房とは、高気密・高断熱の家で、2階に設置したエアコン一台を24時間稼働させて、家全体を快適な温度・湿度に保つ方法です。
高気密・高断熱の家は、外気との熱のやりとりが少なく、室内の温度を一定に保ちやすい特徴があります。そのため、エアコンの冷気が家中に行き渡りやすく、一部屋だけでなく全館を冷房することができます。
また、エアコンは除湿機能も備えているので、湿度もコントロールできます。エアコン一台冷房は、一般的な家庭用エアコンを使うので、特別な機器や工事は必要ありません。
エアコン一台冷房のメリット
エアコン一台冷房には、以下のようなメリットがあります。
– 快適性:日本の夏は温度と湿度差が高く、最近では家の中でも熱中症の危険があります。全館冷房で家の中の温度を均一化することにより常に暑すぎずかつ寒すぎない快適な生活を送ることができます。
-省エネ:全館冷房には電気代が高くなると思われるかもしれませんが、高気密・高断熱の家では小さいエアコン一台を効率的なパワーで動作させ続けることにより電気代を抑えることができます。結果として、複数のエアコンを設置するよりも初期費用もランニングコストも抑えることができるようになります。
– カビやダニの防止:エアコンにより室内の湿度を適切に保てます。湿度が高いと、カビやダニが繁殖しやすくなり、アレルギーや健康に影響を及ぼす可能性があります。全館冷房では、湿度が高くならないように制御できるので、家中のダニやカビの発生を防げます。クローゼットや押し入れの除湿を個別にしなくても湿度が高くならないため、保管している物の状態もよくなります。
高気密・高断熱の家ではこれらのメリットが大きいため家を検討している方にはぜひ検討をおすすめしたいです。
エアコン一台冷房を実現するための注意点
エアコン一台全館冷房を実現するためには、以下のような注意点があります。
エアコンの設置位置
エアコン一台冷房を実現するためには、エアコンの設置位置が重要です。エアコンは2階に設置し、階段を上がった先のホールや通路にすると良いです。階段は1階と2階が通じている場所なので、この位置にすることで、部屋による温度差を少なくすることができます。
エアコンの大きさ
エアコン一台冷房では、エアコンの大きさも考慮する必要があります。エアコンは6畳から30畳程までの大きさが販売されていますが、高気密・高断熱の家では、無駄に大きなエアコンを買う必要はありません。大きいほど機器の値段も高く、動かすための電気代も高くなります。エアコンの大きさの目安は、以下のとおりです。
- 延床面積34坪以下の家で6畳用
- 延床面積35坪~40坪程の家で8畳用
- 延床面積41坪以上の家で10畳用
ただし、家の間取りや日射制御ができているかで、エアコンの適切な大きさは変化します。大きな窓が複数あり、日中の長い時間日射が入る家と、日射制御をしている家では、家に入るエネルギーが変わってくるため必要なエアコンは異なってきます。
大きすぎてもエネルギー効率が悪くなってしまうため、常時稼働することを考えると上記参考以下のもので十分です。
エアコン1台全館冷房については、理論的に詳しく解説して頂いているフエッピーさんのブログを読むと設計について参考になると思います。
エアコンの種類
エアコン一台冷房では、エアコン周りが冷えて設定温度に到達しサーモオフ状態になることがあります。サーモオフ状態では、室外機が停止し、冷却・除湿しなくなります。サーモオフになると、除湿しなくなるため、室温が低いのに湿度が高くなり、ジメジメとした不快な室内となってしまいます。
外気温の高い夏は冷房温度を下げることで自分の快適な温度を探るだけでよいですが、外気温が低く湿度も高い梅雨の時期は、除湿が停止し不快な湿度になってしまいます。
その対応として、再熱除湿機能付きエアコンを使用することをおすすめします。再熱除湿は冷却して除湿した空気を温め直して送る機能ですが最近ではハイエンドのモデルにしかついてないことが多いです。
エアコン2台か床暖房などを設置している場合は2階のエアコンを冷房、別のエアコンを暖房で動作することによりサーモオフしないように除湿することもできます。
一条工務店では床暖房とエアコンを設置することが多いと思いますので、再熱除湿のないエアコンを設置している場合でも運用によって梅雨を快適に乗り越えることはできます。
再熱除湿なしエアコンの2台稼働ではランニングコストが再熱除湿エアコンよりかかる可能性がありますが、初期費用が安いのがメリットです。梅雨の時期は1ヶ月程度ですので、トータルコストの比較としてはそこまで大きな差はないかもしれません。
また一条工務店では「さらぽか」というものがありますが、除湿をデシカント方式で行っているため設備費用とランニングコストを考えるとエアコン1台の方がお得になります。
一条工務店で選べる「さらぽか」と「うるケア」どちらかであれば自動給水でメンテナンスなしで加湿のできるうるケアがおすすめです。
エアコン一台全館冷房の実践方法
エアコン一台全館冷房を実践する方法について紹介します。
1台で全館冷房するためには、高気密・高断熱の家であり、設計の段階で2Fホールにエアコンを設置するのが重要です。もし、設計が終わってしまっていても、高気密の家であれば第一種換気システムを導入していると思いますので多少の寒暖差が出るくらいで運用できると思います。
運用は特に難しいことはなく、
1. 各部屋のドアはできるだけ開けておく
2. 冷房温度は体感温度で快適な温度に調整する
3. 梅雨の時期は、再熱除湿または暖房との併用をする
4. 湿度を確認して、40-60%となるようにする
温湿度計の設置
温度と湿度を管理するための温湿度計は、SwitchBotの温湿度計がおすすめです。精度もよく過去のデータを記録してくれるため温度と湿度の推移を把握することができます。
スマホアプリででまとめて管理するためにはリモコンハブも必要となりますが、一括管理ができるのとテレビやシーリングライトのリモコン制御もスマートスピーカーでできるようになるため便利です。
わが家では1Fと2F、エアコン付近、屋外の4箇所に設置して温度と湿度差を確認しており、アプリで簡単に全て一括で確認することができます。
カビや結露は絶対湿度を考える必要があると言われていますが、アプリから絶対湿度も確認することができます。ただし、エアコンで気温を20-25℃程度に制御しているので、相対湿度で40-60%程度を意識して調整すれば、カビや結露は問題ありません。
まとめ
エアコン一台全館冷房とは、高気密・高断熱の家で、2階に設置したエアコン一台を24時間稼働させて、家全体を快適な温度・湿度に保つ方法です。エアコン一台全館冷房には、快適性だけでなく電気代の節約やダニやカビの発生防止などの大きなメリットがあります。エアコン一台全館冷房を実践するには、エアコンの種類や設置位置などに工夫が必要です。エアコン一台全館冷房は、高気密・高断熱の家なら誰でもできる、省エネで快適な冷房方法です。ぜひ、検討してみてください。
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